福岡県高校新人戦

<主務の福岡紀行・その1>


ラグビーを始めた頃、強いチームといえば、早稲田でも明治でもなく、
「釜石」だった。
昭和54年から60年まで日本選手権7連覇。
キック中心の手堅い試合運びが全盛の時代に、FWがステップ切ったりする規格外のチームだった。(7連覇時の社会人決勝の「13人トライ」は生で見た。そらぁ、興奮しましたよ。)
成人の日、国立競技場の大漁旗が揺れるバックスタンドを背に、大学王者を簡単にひねりつぶした「北の鉄人」たち。
その中心には、糸の切れた凧といわれる予測不能のステップで相手ディフェンスを切り裂くヒゲの森重隆氏がいた。現役引退と同時に、家業を継ぐために新日鉄を退社したと記憶している。
その森氏が母校である福岡高校ラグビー部を指導しているという。


九州に行く機会があったら、ぜひ見たいと思っていた福高。
見てきました。
福岡県新人戦2回戦。


現役時代、主に独創的なアタックにおいてその才能を煌かせていた人の指導するチームは、忠実なサポートを武器に、グラウンドを広く使い、低くて痛そうなタックルをする統率のとれたチームだった。首から上だけで何十針も縫った人のDNAは、数十年の時を経てこのチームに刷り込まれている。
日本代表が目指すべきラグビー、といったら言いすぎだろうか。(高校生の試合を見てるとこの感想にいきつくことが多いのだが)


試合中、ベンチから飛ぶ、久しぶりに聞く森氏の声。指示の内容は厳しいものだったが、なぜか暖かい響きなのは、それが博多弁だからではなく、彼が学生とラグビーを心から愛しているからなんだろう。


めったに来ることのない福岡で、自由になる時間の大半を東福岡高校のグラウンドで過ごしてしまったが、
幸福な午後だった。


それにしても、
会場となっている東福岡高校の人工芝グラウンド。
ホントに高校の校庭?
全国制覇する学校に相応しい設備。
あのブレイクダウンの強さは、もちろん選手たちの練習の成果だが、
この環境あってのものなんだな、きっと。