10.14 ミスター引退の日

小学生のころ、巨人ファンだった父に連れられ、よく川崎球場に「大洋×巨人」を見に行った。
応援している巨人が敗色濃厚な終盤、名物の肉うどんも食べナイターを満喫した私が帰ろうと駄々をこねると、父は
「次の回、長嶋の打席を見てから帰ろう」と言った。


36年前の今日、後楽園球場でミスタージャイアンツ長嶋茂雄引退試合があった。
町の少年野球チームでミスターと同じ背番号3(ファーストを守っていたからなのだけど)をつけていた私は、優勝を決めていた中日が、この日のダブルヘッダーに2軍に近いメンバーで臨んだことに本気で腹を立て、1試合目と2試合目の間にミスターが外野席のファンに挨拶しにいったシーンに涙し、最後の打席で併殺打に倒れると、ミスターと同じように天を仰いだ。
そして当時、あの有名な引退セレモニーの挨拶は、当然のように暗唱できた。


日本人選手がメジャーリーグで、ノーヒットノーランや200本安打を達成する昨今。
WBCの結果を見るまでもなく、この国のレベルは、世界のなかでもかなりのポジションにあるのだろう。


それでも、ミスターが引退してからの36年間がそうだったように、これからも彼のような選手は二度と出てこないのだろう。


ミスターは昭和という時代のなかでしか生まれえなかったヒーローだと頭ではわかっているけれど、
ヘルメットが飛ぶようなフルスイングの空振りでスタンドを沸かせ、
自分が愛したチームは永久に不滅だと言いきってしまう、
そんなヒーローの登場を心のどこかで、いまでも待ち望んでしまう・・・