最後の嘘

医者は、何度も見たことのある左胸部のレントゲン写真の一部分を、ボールペンの後ろの部分で指して言った。
「ほら、ここに細〜く線が入ってるでしょう。わかりますか?」
長年の経験からくる自分の感覚と診断結果が一致していることに思わず苦笑いしてしまう。
「こんな暑い時期にバンドで固定したくないですよね。とりあえず湿布を出しておきますので、痛みが引くまで大人しくしていてくださいね。」
「はい、わかりました。ありがとうございます。」
と言って診察室を後にするが・・・


もちろん、そんな指示に従うわけにはいかない。
関東大会まで3週間を切っているし、今週末の練習には大阪からもメンバーが参加することになっている。



土曜日、平塚での練習試合。
相手のクロスを読み切り、完全にコースをふさいだら、ボールを持った相手選手(体型的にロックと思われる)がトップスピードで体当たりしてきた。
普通こういう場合、かわそうとするか、素直にタッチされて次の攻撃を仕掛けるんだけど、前がまったく見えてなかったんでしょう。
してやったりとのんきにタッチするつもりだったので、飛ばされる。
肋骨を強打。
で、冒頭の診断結果。



関東大会まで、あと19日。
もちろん、この程度のことで凹んではいられない。
これは、きっと「今週は、軽い有酸素運動で心肺機能は維持しつつ、疲労を取り除くことに専念しろ」というビーチの神様からのメッセージ。



ただ一つ、安全なスポーツだから、と言って勧誘した新入部員にドン引きされないかが、ちょっと心配だが。


・・・


整形外科にウソをつくのは、もうこれで最後にしよう。