captain

澤さんが、試合後、子どものようにはしゃいでいるのを見てほっとする。
自分のパスミスからの失点を、決勝点となるヘッドによって帳消しにしたから、とかいうことでなく。


気のせいだったらいいのだけれど、試合中の彼女のふとした仕草、表情から、何となくコンディションがベストではない様子が感じとれた。ふれられただけで飛びあがってしまうほど痛い箇所があるとか、血液のなかの疲労物質が異常に高い値を示しているとか。
もちろん、生彩を欠いているということではなく、海外のメディアからも称賛される素晴らしいプレーを魅せているし、キャプテンとして背中でチームを引っ張っている。
長い間、挑み続け、夢見てきたことが、もう少しで現実になる戸惑い、とかいうことであればよいのだけれど。


数年前の七夕の日、彼女は短冊に「W杯で金メダルを獲る」と書いたという。
その時、まわりにいた人はきっと、リアクションに困り、曖昧な頬笑みを浮かべていたんだろうな。
その願いまで、あと一歩。
決勝の相手、アメリカとの過去の対戦成績は、3分21敗。
この数字に何の意味があるのだろう。
彼女たちが信じているのは、選手、スタッフが一丸となって今日まで築きあげてきたもの。


なでしこ達が、表彰台でいちばんキレイに輝くメダルをかけてもらうことを願わずにいられない。
18年間、さまざまな重たいものを背負い続けたキャプテンが、その重圧から解き放たれますように。


・・・


3時過ぎに起きて、TVの前でドキドキして、眠くて仕方のない幸せな1日を過ごすのが、あと1回だけというのは、少しさみしい気がするな。